魚巻き

2002年3月14日
いよいよ海の季節が始まった。
護岸を歩いていると、ぎまのおじーが船に燃料を入れている。
「おじー、蛸捕りに?」
「魚巻きに行くさ!」
魚巻きとは巻き網漁の事。
「おじー、俺も行くよ!」
冬はイノシシ猟師だったオジーは春になると稲作農家、そして農業の合間を縫ってウミンチュウに変身する。この日は祖納からきたオジーと3人で海に出た。

前の日に偵察して魚のいる場所を調べてきたオジーはまず網取にあるリーフ、ウーピーへ。西表島には島の全域に昔からの地名が残っている。それは陸だけではなく珊瑚礁の一つ一つにも名前がつけられていて、この島に住んでいた人々が遠い昔から島の自然を利用して暮らしてきた証拠でもある。

巻き網漁は干潮時、浅くなった珊瑚のリーフの上で行なわれる。まず船の上や岩の上から獲物である魚を探す。浅くなったリーフの上を泳ぐ魚の群れは時おりヒレを水面に覗かせてエサを食べている。
オジーたちはそんな魚の群れを発見すると魚に気付かれぬようこっそりと歩いて群れに忍び寄る。ここで二手に分かれ、網の持ち手2名は沖側にまわりこむ。追い込み役は魚の群れを監視しながら手信号で網の持ち手を誘導する。そして一瞬のチャンスを逃さず網の持ち手は半円に網を広げ、そこに追い込み役がリーフを走って魚を網へと追い込むのだ。このときは真剣勝負で、もたもたしていると容赦なくオジーの怒号・罵声が響きわたる。

この日の魚影は薄く、5ヵ所目でやっと魚を巻くことができた。捕れた獲物はボーダ、イラブチャー、シチュー。いずれも刺身に美味しい魚。でも数は少なく、おじーはがっくりと肩を落としていた。
「魚、どこに行ったか?」
「魚の種も尽きたかなー」

それでも帰ってからは楽しいブガリナオシ。祖納から来たおじーには今週法事があるからと一番大きな魚をあげて、ぎまのおじーは自分の取り分を全部さばいて肴に提供する。
昼間さんざん怒られたけど、
「お前をこれから鍛えていくからよ、明日も海に行くからよ!」
そう言われてうれしくて、酒もうまいし狩猟本能も満たされて、これだからやめられません。

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